研究紹介

  • 担当教員: 潮俊光 教授  [E-mail]
  • 複雑システムとシステム工学

    複雑システムとシステム工学

    複雑システム(complex system)とは、多くのサブシステムが結合してできるシステムのことを言います。社会システム、経済システムからネットワーク化システム、組込み制御システム、そして生命システムまで、様々なシステムが複雑システムと言えます。欧米では、cyber-physical system, system of systemsといったキーワードで、複雑システムへの関心が急速に広まっています。

    複雑システムはダイナミカルシステムの一種です。ダイナミカルシステムとは、入力、出力、状態と呼ばれる3種類の変数によって記述できるシステムです。状態はシステムの振舞いを記述するために用いられる変数、入力とはシステムへ印加する信号・データ、出力はセンサによって観測する信号・データです。状態の時間的な変化を表すための規則があります。この規則に従って状態は変化します。電気システムでは変数としては電圧・電流が用いられ、キルヒホッフの法則・オームの法則などがその規則に相当します。計算機のソフトウェアでは、プログラムで使用される変数がシステムの変数であり、プログラミング言語が規則に相当します。これらの規則を用いて、システムがどのように振舞うのかを表します。物理システムでは常微分方程式、計算機では状態遷移システムが代表的な表現方法です。出力とは、設計者が関心を持っている変数であり、出力を意図どおりに振舞うように入力の与え方を議論することができます。入力と出力という変数を考えることがダイナミカルシステムの特徴であり、これらの変数を用いることで、「システムを意図どおりに動かせるか?」そして「最も効率よく動かせるための方法は?」という問題を考えることが可能となります。

    多くの複雑システムでは異なる性質をもつサブシステムが相互結合しています。そのため、上図に示すように、複雑システムの解析・設計・制御には、最適化理論、信号処理、数理科学、制御理論の基礎理論を核に、計算機科学、社会科学など様々な学問を有機的・協調的に用いることが必要不可欠となります。そのための基礎理論とその応用研究を行っています。

    離散事象・ハイブリッドシステム制御理論

    状態が離散変数で記述されるシステムを離散事象システムとよび、計算機のソフトウェア等は離散事象システムの代表例となります。また、連続変数・離散変数の両方が混在するシステムをハイブリッドシステムと呼んでいます。物理システムを計算機によって制御する組込み制御システムはハイブリッドシステムの代表例です。

    離散事象システムに対する最も有名な理論にスーパバイザ制御理論があります。この理論は、1987年にRamadgeとWonhamによって提案されて以来、世界中で活発に研究されてきました。本研究室は、この理論が提案された頃からその発展に貢献してきており、今までに有限状態スーパバイザ、耐故障性のあるスーパバイザ、分散スーパバイザ等に関する研究を行ってきました。
    さらに、操作者の意図と異なる振舞いをシステムがするオートメーションサプライズと呼ばれる現象の解析とそれを回避するためのマニュアルの設計に離散事象システム理論を応用してきました。最近では、余代数と呼ばれる代数構造を用いたシステム理論の構築に関心を持っています。余代数は圏(カテゴリー)論に基づいています。状態を圏(カテゴリー)Sで表わし、その上での自己関手Fと構造射φ:S→FSの組でシステムを表現します。余代数を用いると、より一般的な枠組みでスーパバイザの設計論を論じることが可能となることが分かってきました。この余代数に基づくシステム制御理論の研究者は、世界的に見ても少なく、本研究室のシステム制御理論研究の柱の一つにしていきたいと思っています。

    また、最近では、システムの現在の状態を基に制御入力の次の更新時刻をオンラインで決定するSelf-triggered制御にも関心を持っています。この手法は、次で述べるサイバー物理システムに対する制御手法としても有力であると考えています。

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